HEPT心不全の緩和ケアトレーニング 2022/01/23

内科一般

日本心不全学会が主催,厚労省が心不全緩和ケアの算定に必要と定めている講習がHEPTです.まあ一般には,加算のためにはPEACE研修うけていればいいみたいです.が折角の機会であり,注目している流れであり,かもオンラインで生で講義が聞ける最後のチャンスでしたので(以後,ビデオ講義になるとのこと),参加しました.

  • 構成
    1. 総論
    2. ACP
    3. 身体
    4. 精神
    5. 倫理

休憩をはさみながら,10時−17時.画面の前に常にいるように言われ結構ストレス高めでした.


1総論

緩和ケア,からイメージする言葉は??看取り,終末期・・・どれも本質ではない.WHOのStatementを確認すると,キーワードは生命を脅かす病気,患者とその家族,評価,である.緩和ケアは死に直面しているすべての疾患に必要である.2009年日本循環器学会,2014年救急集中治療学会の終末期ガイドラインが発表され.2020年4月にHEPTが加算要項に加わった.2021年3月日循のガイドラインはアップデートされた.Q:心不全診療において,どのような場面で緩和ケアが必要だろうか?

(参加者の意見)

高齢患者、治療に対して反応性に乏しい患者様.

積極的な加療を望まれていない方が、心不全症状で苦しまれている時

1年間で何度も入退院を繰り返している場合

通常の治療では症状が消失しなくなったとき、入退院を繰り返すとき

本来ならば、早期から必要だと感じますが、実際には心不全増悪を何度も繰り返すようになってきた際に感じます

いわゆる適切な治療を行っているにもかかわらず症状改善が見られない患者に対して

心不全での入退院を繰り返している高齢患者さんが経口摂取も難しい状況の時

心不全増悪による入退院を繰り返している患者さん

full medicationを行っていても症状が改善しない時

症状のコントロールが難しい時

末期心不全患者における症状緩和が重要に感じておりますが、近年は入院を繰り返すような患者に早期に介入していくことが重要と感じます

本人と家族の理解や希望が異なるとき

正直、癌と違い判断に迷います

高齢だと心不全だけでなく様々な疾患・認知機能があるのでタイミング難しいです

StageDで心不全を繰り返し.薬物治療でも本人の生きる希望が無くなってきたとき.

心不全患者の苦痛について理解しよう.心不全患者は全人的苦痛を多く抱えている.当然単独医療職では関わることは困難である.共通言語をもつことで,アプローチがしやすくなる.癌と心不全を比較した論文では,倦怠感や痛み,精神的な苦痛がそれらに共通しているとされる.社会的苦痛とは,経済的困窮,収入不安定,生活環境サポートが得られていないといった問題を指す.スピリチュアルな苦痛とは宗教的な問題だけではなく,「こう有りたい」という希望と現実とのギャップの苦しみ,と言われる.また「迷惑をかけること」もスピリチュアルペインにつながる,と考えるとよいだろう.循環器・救急・集中治療の現場で求められる緩和ケアはもともとの緩和ケアとそう変わらない.予後を考えると,急性心不全の1年死亡率は20%程度.心不全の予後予測ツールは開発されているが予測範囲を話し合うほうが重要.現在の心不全の緩和ケア加算は年に2回以上入院していることが必要でありStageDの末期がイメージだが,実際はStageBの後半くらいから必要だ.”通常ケア”から”緩和ケア”にスイッチをするイメージではなく,診断をつけたところから,徐々にシフトしていくイメージをもつ.利尿剤や強心薬も最後まで必要となる.ニーズ評価のきっかけとなるタイミングとしては ①新規発症重症心不全の退院時,ICD・PMの植え込み時,②心不全定期f/u時,③患者家族関連で問題が出た時,などが挙げられる.苦痛の評価は包括的ツールを使うのが良いだろう.家族の死は強いイベントであり,家族や介護者にも提供されることが望ましい.

症例提示:CHFで10年前から加療中.3年前に2回入院,1年前CRT-D植え込み術.家事は本人が担当.一人娘は遠方.半年前に再入退院.今日は2週間で3kg体重が増えている.Q:この方のプロブレムには何が挙げられるだろうか?

(参加者の意見)

内服アドヒアランスは大丈夫であるか?

介護サービスは利用されているか?

夫の介護度は?

老老介護といえる.

起坐呼吸・息切れなど身体的症状があるが、家事の担い手でもあり自身がいないと家が回らないと思っており入院も困難

日常生活が心不全の症状のため送れない。

身体症状:倦怠感、呼吸苦

倦怠感・呼吸困難といった身体症状。

介護力が乏しい。また不安もある。旦那様の家事への協力も得られるのか

身体的苦痛だけではなく、精神的苦痛、社会的苦痛、そしてスピリチュアルペインを有していないか

認知症の評価

塩分制限や過労を防げていない

アドヒアランスが低下しているなら、認知機能低下によるものか、意欲の低下によるものか?

不眠は心不全による所が大きいと思いました

遠方の家族との関係

ご自分の状態の悪さから予後への不安 同居するご主人の健康状態、介護力はどうか気になります

キーパーソンを誰と考えるか?

身体症状と日常生活、夫の介護が重なっている

日常生活動作にどれくらいの支障が出現しているのか?やりたいことがどれくらいできなくなってきているのか。

社会的:易疲労による家事困難

適切な薬物治療は行われているのか?HOT導入については検討されたのか? まずは改めて、現在の治療内容について確認する

認知の状況。夫の介護度。内服アドヒアランス。

他の介護の担い手がいるか?

食事や日常生活のスタイルについて。

治療負担に対して患者家族のキャパシティが対応できるのか

在宅生活で具体的に困っている点

家族によるサポート、社会サービスの利用しにくさ

スピリチュアル:家庭内における自分の役割の損失

娘さんが病状を理解しているか

心不全増悪を引き起こす契機はなにか

体重増加や胸水貯留、恐らく呼吸状態の悪化による身体的苦痛と、うつ症状、夫の介護等を充分にこなせないつらさ、娘に様々な形で負担をかけているつらさ。薬物治療が充分に行われ、服薬が適切にされているか知りたいです。

不眠もあり 精神的なつらさもあると考えます  ケアギバーが乏しいことが今後問題になりそうなので、娘さんがどれだけ状況把握しているか、を知りたいです

認知機能の低下に合わせて誰が代理意思を行っているか。その代理意思決定者の負担はどうか

IADL、ADLの低下がどうか。介護度やケアマネなどの社会福祉資源がどの程度入っているか。うつ病のスクリーニングも行いたいです

同居の夫を含めて、地域サービスを確認

第一部 総論のまとめ 治療の最適化に重点をおきながら,予測困難な疾患経過の中で苦痛とQOL低下に目を向け,その改善も同時に目指すことが重要となる.

緩和ケアの診療加算要件について,チームによる診療がある場合,390点/日になる.適切な治療をしていて,かつNYHA:Ⅳ度,1年以内に2回以上入院していること,EF20%以下,緩和ケア診療実施計画書を作成する必要がある一般に緩和ケアチームの定義上,身体科常勤医師一人,精神科常勤医師一人,緩和ケア経験看護師一人,緩和ケア経験薬剤師一人が必要.精神科医がネックになって,加算がとれないことが多い.精神科医の医師も常勤が必要.医師においては緩和ケアの研修が必要,それがPEACEやHEPTにあたる.外来は,心不全の患者も麻薬投与していると290点.がんと心不全緩和ケア介入比較は,年齢は心不全の方が高い,また心不全の方が呼吸困難が多いことが,わかっている.

Q:精神的苦痛とスピリチュアルの違いについていまいちイメージがつきません。A:精神的なものとは不眠,など.スピリチュアルな問題とは,価値観の問題.

Q:ICDの患者さんは精神的にかなり辛くなる,と指導医が仰っていたことを思い出しました.専門の先生からみられて,その影響を詳しく教えていただきたいです.A:除細動のショックがおおきい,バットで殴られるようだと言う人もいる,自分の患者さんだと,頻回作動すると次のショックがいつくるのか不安,うつ傾向になります.予期不安が強い.いつ来るかわからない.精神的な苦痛がICDの患者の一部を占める.心理師介入事例もあり.臨床倫理でもとりあげます

Q:緩和ケアニーズ評価のきっかけをつかんだ後、専門の先生方は全人的苦痛の評価を身体的苦痛、精神的苦痛、社会問題、スピリチュアルの4項目に分けてカルテに記載されていますか?それを元にコメディカルと共有されたりしますか?それとも元来看護師さんがこのようなアセスメントを得意としており、看護師のカルテ記載を元に話し合う形が多いですか?A:コンサルテーションはどういうことでこまっているかを書くことが多い.循環器,緩和ケア,心不全を専門に,身体症状はプライマリ/主担当医がまず行います.データセットや色々な評価を用いることで,考えやすくなるので.

Q:心不全患者はガン末期と異なり、予後予測が難しいため、医療者側も患者側も緩和ケアへの移行が気持ちの上でも難しい印象です。どんどん悪くなっていく患者を目の前にするとこれ以上やれる治療はなかったのかと頭をよぎることが度々ありますが、皆様はどのように緩和ケアの方にぐっと方針転換をされているでしょうか。A:転換,というより,評価を繰り返してくしか無い.施設内でも関心のある人ない人がある.一人主治医で抱えると悩むことが多いが,多職種協働する.

Q:入院の場合はじっくりカンファレンスを行えることが多いと思いますが、慌ただしい外来の中で緩和ケアニーズを短時間で評価出来る一覧表のようなものは作っておられますでしょうか。それとも専門外来へ紹介し評価する形でしょうか。A:作っていない.神戸大学の外来ではIPOS(Integrated PariativeOutcomeScale:http://plaza.umin.ac.jp/pos/frame.html)を使って,PRO(Patient Related Outcome)を評価やっていました.循環器の専門外来ではなかなかできません,緩和ケアを話題にすることはないのが現状です.

Q:心不全の「痛み」とは狭心痛以外にも原因や病態がありますか?A:回答時間なし.後ほど.

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