心電図攻略シリーズ:Wellens syndrome

循環器

DM既往の89歳女性
安静時の失神で受診。動悸や胸痛などの随伴症状なし。
1週間嘔気を繰り返し倦怠感あり。現在その他の自覚症状なし。

心電図は以下

ST−T変化はありそうだが、この所見の意義は?


Wellens syndrome

疾患概念
左前下行枝T波症候群と呼ばれる不安定狭心症の一型
・不安定狭心症145人中26人(18%)がWellensTと呼ばれる特徴的心電図変化を示す
(Cureus. 2020 Feb; 12(2): e6877.)(PMID: 32190440)

・心電図変化は、左前下行枝近位部の高度狭窄による心筋障害を反映
症状が落ち着いた際に出現し,心電図変化は数時間~数週間持続
早期の血行再建術を行わなければ、平均して 8.5 日で心筋梗塞へ移行
(Am Heart J 103(4 Pt 2):730-736, 1982. )(PMID:PMID: 6121481)
(Am Heart J. 1989 Mar;117(3):657-65.)(PMID: 2784024)


特徴的心電図変化とは
・V2~3 誘導において
 ・Type A(25%):二相性(陽性→陰 性)の T 波
 ・Type B(75%):左右対称性の深い陰性 T 波
・TypeA→B並行する例も多い
・鑑別:脚ブロック、左室肥大、頭蓋内病変、肺塞栓など
(StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2020 Jan.2020 May 28.)(PMID: 29494097)

TypeA

TypeB


WellensTの診断特性と意義
・冠動脈造影を受けたNSTEMI患者の後方視的分析
・V2とV3の両方で対称的に反転したT波(≥0.10mV)または二相性T波をWellensTとして定義
NSTEMI患者274人が最終分析に含まれ、そのうち24人(8.8%)がWellensTを示した
・これらの24人の患者の責任病変は、16人はLAD(近位8人)、2人は非LAD、6人は非閉塞性冠状動脈疾患
・Wellensの兆候のある患者ない患者と比して
 LADの狭窄を有する確率が高く(66.7%対19.6%、P <0.001)
 近位のLAD病変である確率も高い(33.3%対14.4%、P = 0.035)
・WellensTのLADの原因を予測するための感度は24.6%、特異度は96.2%
(Cardiol Res. 2019 Jun; 10(3): 135–141.)(PMID: 31236175)

文献の中で繰り返し強調されているのは来院時は症状が消失しているため軽視されがちであること。
しかしまあ電位も高ければうっかり心肥大といってしまいそうな心電図です。(特にTypeB)

エコーで肥大がないのにこれらの所見を認める場合循環器科にコンサルトをためらわないようにしましょう

Take home message

・WellensTはLADの狭窄を反映

数日経過で心筋梗塞に至る可能性が高いので要注意!

・来院時は症状がない場合もあり心肥大と言わないように。
 心肥大らしい心電図だがエコーで肥大がない場合に念頭に置く

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