右心不全をどう考えるか①

循環器

最近管理を見直したいなとおもっている右心不全について勉強し直しです。
(Ann Am Thorac Soc. 2014 Jun;11(5):811-22.)

基本原則の確認です!

右心前負荷は静脈還流、右心後負荷は肺血管抵抗

肺血管抵抗は換気血流不均衡是正のため生理的に上昇する(=低酸素性肺血管収縮(hypoxic pulmonary vasoconstriction;HPV))

頻度の高い右心不全は右室梗塞、肺血栓塞栓症やCOPDはなどの2型呼吸不全→肺血管が気腫で圧排されて元々肺血管抵抗が高い人に肺炎などでHPVが重なるもの

他にも人工呼吸器によるPEEPや高い胸膜圧は肺血管を圧迫し肺高血圧→右心不全をきたしうることを認識せねばならんですが
往々にして右心不全+呼吸不全も合併し人工呼吸器管理となりPEEP管理に気を使う症例が多い
どのように考えればうまくマネジメントできるか、二部構成でお送りいたします。


右心不全を理解するための生理学



①肺循環の特殊性


肺循環は、安静時と運動時の両方で低圧回路

心拍出量がベースラインの4倍になるような激しい運動でも、
肺血管抵抗は低下し肺動脈圧上昇は最小限に保たれる
これは、運動中の心拍出量の増加が血圧の大幅な増加に関連している体循環とは対照的である

2つの循環の違いは、
心拍出量が増加するにつれて虚脱した血管または未使用の血管を動員する肺の能力
近位肺血管床の血管運動緊張の程度が比較的低いこと
に基づいている

体循環では動脈圧と静脈圧の間の大きな抵抗は平滑筋の作用が強い細動脈が担う。

この平滑筋の収縮拡張は必要に応じて血流をさまざまな臓器に再分配し

交感神経刺激または一酸化窒素やプロスタグランジンなどの内因性カテコールアミンまたは血管拡張剤の放出を介して調整される

→我々は血管収縮薬や拡張役を使用して緊張度をコントロールすることができる


対照的に肺循環における平均動脈圧と静脈圧の差は10mmHg未満であり、

最大の抵抗は平滑筋の作用の乏しい微小循環と肺胞毛細血管全体となっている

肺循環は血管緊張が比較的低く、肺動脈圧を急激に増減させることは困難


②右心室(RV)の特性

右心室は自由壁が薄い(RV2〜3 mm/LV8〜11 mm)

筋質量が小さいほど収縮力は小さくなるがRVの拡張末期の体積と血液の体積あたりの表面積は大きくなる

筋細胞が薄く分布していることにより血液と広く接することになる

LVでは筋細胞は円周方向に配向し収縮期に内腔が同心円状に狭くなる一方、

RVの自由壁は表層は横方向だが深層は繊維が心尖部から基部まで縦方向に配列

収縮期には心尖部が三尖弁に向かって移動する縦方向の収縮が生じる

この構造の違いによりRVは体積を大幅に減少させ高いコンプライアンスを発揮、より少ないエネルギー消費でLVと同様の1回拍出量を達成できるようにしている

コンプライアンスがいいので静脈還流の変化に対応するのに適しているが

収縮力が弱いので後負荷の急激な増加には耐えられないという弱点が有る

↓RVは後負荷が上がると一回拍出量(SV)が落ちちゃう

重度の右心不全になるとSVが低下し右心室内のVolumeが増加

拡張期に心室中隔を圧排し左室機能にも影響を及ぼす=いわゆるDshape


まとめると

肺血管はふにゃふにゃで緊張がない。こちらから締まり具合=血管抵抗を調整しにくい

右心室は壁が薄く、肺血管抵抗の上昇に非常に弱く容易に拍出量が落ちてしまう

拍出量が落ちた結果Dshapeをきたすと左心系の収縮にも影響を及ぼす

ということですね!
右心後負荷、前負荷をどのように見積り適正化していくかが難しいところです

これをどのようにマネジメントするかは次回に

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